2.17.2012

遠いサンタクルス



長居をするつもりは無かったのだけれど、なかなか出られなくてね、ラパスの町に19泊していた。

よっこらせ

私はサンタクルスに向かうことにしました。





サンタクルス行きのバスは、数社あるものの、夜行1本だけのようだった。

カマが170ボリとかセミカマが130ボリとか・・・高いでしょう?こんなもん?


挙句の果てにはカマしかない。170だ!!と、どの会社も言いだす始末で、ターミナルを右往左往。

決めかねていたのでした。

そこへ、優しいバス会社のおばちゃんより、耳寄り情報。

コチャバンバで乗り継ぐと安く行けるよ!!とのこと。

というわけで、出発は明日の朝に延期。



さあ、いよいよです。


雨の降り続く月曜日。コチャバンバ行きのバスに乗り込みました。

8時、9時、・・・と朝から何本かあるようです。

私は正午発、夜8時頃着くよ というバスにしました。



休憩しつつ、順調にバスは走る。名も知らぬ村や平原の風景に、釘付けです。




コチャバンバに近づくにつれて、

また、雨が・・・・。


雨季ですなぁ。


コチャバンバ、8時半到着。

10時のサンタクルス行きのチケットを買い、のんびり1時間程待つこととなりました。

料金は、
ラパス~コチャバンバ         20ボリ(200円)
コチャバンバ~サンタクルス     70ボリ(セミカマ)



水っぽいりんごジュースで一服して、

午後10時。

乗客はみな席に着き、いざ出発!!という、和やかな雰囲気のバスの中。

突然のお知らせ。

悲しいお知らせです。





「道路が封鎖されましたので、バスは出ません」  







あがぃ~


なんということでしよう。

ストライキですね。

いつ終わるのか分からないやつでしょ。

隣の席のおじさんは、飛行機で行くって言う。いつまでかかるか分からんからね、わたしにも、飛行機がいいよって、勧めてた。

だけど、

バス会社の人は、

「明日には、出るかも知れない」とか言うのよね。

確かに、そうかも知れないではある。

けどね、

いい加減なことを言うのですよ。



チケットの払い戻しを済ませ、始発のバスの時間を調べてみると、

朝5時半のが見つかった。

一晩、ターミナルでやり過ごすかな?

うーーーーん。辛いでしょう・・・

朝一で出られるとも限らないのだし。

うーん

雨だし面倒くさいなぁ、と思いつつ、外の様子をうかがっていると、

「どうしたの?」と話しかけてくれた親切なお姉さんが、ターミナルの外まで出て、近くの安宿を教えてくれました。

名も知らぬ宿
ターミナルを出て右へ3分くらいの所。35ボリでした。


とりあえず、始発を狙おうと4時半に目覚まし。


朝、

起きてみると、まだ雨が降ってる。

そんで、超眠い。

出発出来るかどうかも分からないのだし・・・・

7時と8時台にもバスあったし・・・・

まあいっか、ということで二度寝。
(その後は夜6時か7時くらいまで無かった。他の会社も探せば昼便はあったのかも知れませんが)

たっぷり眠って元気いっぱい、8時にターミナルへ行ってみました。

「サンタクルス、サンタクルス、」

あった!!

バス走ってましたねぇ~

ラッキー。

1泊ですんだ!!

喜んでバスに乗ります。

昼便は普通席だったので、50ボリでした。

サンタクルスまでは11時間くらい。夜7時くらいには着くわ。よしよし。

バスは、軽快に走る。

山を越え、どんどん標高も低くなってきます。もったりとした熱い空気がまとわりつく。

ラパスもコチャバンバも雨で寒かったんだよね。標高も高いし、ダウン羽織ったりするくらいだった。

それが、上着を脱ぎ、半袖で風を浴びてても汗ばむ熱気。

夏のにおいがした。

南の島を想い出して、ちょっぴりセンチな気分になる。




途中、2回も荷物チェックがありました。



乗客は全員降りて、少し歩いて行ってバスを待ちます。その間トイレ行ったり食べ物買ったり。

で、バス何してんだべ?と思って覗いてみると・・・

私のリュックをこじ開けて、手をつっこんでゴソゴソしているじゃありませんか!!

「あがぃ~何やってるかよ?!」

言葉は分からないだろうから、笑顔でそう言ってみました。

「ハポン(日本人)!?チーナ(中国人)?」と相手も笑顔で友好的です。

そんで、

「ここの鍵あけて」 ってつっこんだ手を抜き、笑顔を向けられました。

はいはい って素直に鍵あけてあげました。

ゴソゴソやって、OK!! いったいナニがしたかったんでしょう?





すっかり山を下りて、平らな道をぶっ飛ばすバス。

高いから微妙に揺れて怖いわ。

猛スピードで走っていたのに徐々に減速。

そして、

ぴたりと止まって動かない。

出た~

ストライキ

ブロッケオ!!!

道路が封鎖されています。

しばらくして時計を見るともうすぐ5時になろうとしていた。


もう終わってたんじゃなかったの?ってか1回終わって、新しいストなの?



みんな慣れた様子で寛いでいる様子。散歩したり、ベンチでおしゃべりしたり。


いつ始まったとも知らず、いつ終わるのかも見当がつかず、私はぼんやり窓の外を眺めていました。

読みかけの本を読んで暇を潰す。クスコで交換した「肝臓先生」

次第に暗くなる。字が読めなくなる。お腹が痛くなる・・・・







今日食べたモノ いたって普通。


近所のホテルでトイレを借りる。

夜になる・・・・




バスの運転手さんが、9時ごろには終わるんじゃないかな?って言う。
 
なんでだか分からないけど・・・。
 
それなら、もう少しだ。

時々外に出て、バスの周りを歩いたりしながら9時を待った。

9時過ぎた、
 
10時過ぎた、
 
雨が降り出した。

乗客はみんな席に着き、眠りにつく。

私も眠った。
 
朝起きたら、サンタクルスだといいな・・・



朝、



何時だったんだろ?辺りが騒々しくて目を覚ました。

顔を上げると、サンタクルスの方の空がピンクに染まってきれいだった。

そして2度寝した。こんな所でもぐっすり眠れるようになった私。いい感じ。


7時ホントに起きた。
 
誰も居ない。

運転手さんに聞くと、皆歩いて行ったとのこと。
 
 
どこへ?
 
どうやって行けるの?
 
私を置いてみんな行ったのね?
 
 
 
 
ふーん
 
 
 
寂しかったです。

 
 
とりあえず腹は減るので、なんか食べましょ。

ここは普通の町中の道のストライキだから、なんでもあって安心だ。

山の中や、平原に道一本 なんて所だったら、と思うとゾッとするね。




 
 



朝ごはん
 
パンと、牛肉の揚げハンバーグみたいのと、ユカイモ。
 
店の兄ちゃんと、ブロッケオ大変だね~とかボリビアどうね?とかお話ししながら頂きました。
 
こういう状況でも、そんなひと時は楽しいものです。

ご飯食べて、満腹して、ホテルでトイレ借りてバスに戻りました。

独りぼっちの乗客になってしまった・・・・
 
と思っていたけど、斜め前に座っていた、いい歳な感じのカップルが道端のベンチに座って居ました。

彼女が泣いていたのはどうしてでしょう?

そして、もうひとり若い男性もひとり残っていました。
 
 
 
午前8時過ぎ。
 
運転手さんが、「バモス!!」と言ってバスが動き始めました。

少しバックして、反対車線に移り、いい調子で走りました。

どうやら9時に終わるとの事。

数100メートル走って、止まる。ぴたりと止まる。



この先が封鎖されてるらしいよ。

バイク野郎が封鎖してるらしい。




バスの下で眠る人が居る。
 



信号は変わり続ける。みんな止まっているというのに。



 

 

9時まであと2、30分。

きっと9時になったら終わるんだわ・・・期待を込めてそう思う。

しかし、
 
車は動かなかった。

9時半になって、さっきのカップルも荷物をまとめてバスを降りた。

アディオスって言う。チャオじゃないんだね。
 
 
 
私は、バスを降りてどうすれば良いのか、分からないのだよ。

だから、ここに居るのだね。

どっかまで歩いて行って、サンタクルス行きのバスをつかまえて、スーっと行けるなら、それがいいように思う。
だけど、私にはそのやり方が分からないのだよ。
 
とりあえず、歩き出してみたら、なんとかなるような気もするけど、ここを離れるのは怖いでしょ。

だから、ここに居るよりなかったんだね。

だけど、

私はまるで、自分の意思でここに残っているのだよ!!と言わんばかりの積極的な気持ちになって、

この結末を見とどけるのが楽しみにもなっていったんだよ。

自分の意思とは関係なく、事が運ばれていくのを見守る。
 
いつの間にか、ワクワクしてたんだよ。
 

ナニがどう動いていくのか?他人事のように眺めていた。

私は、すっかり落ち着いていた。




午後になって、腹が減る。

レストランを覗く。

いつ出発しちゃうか分からないから、念のため持ち帰りにした。用心深いのである。



独りぼっちのバス。若い男の人もどっか居なくなってる。


美味しそうでしょ!?
 
ハイ。
 
美味しいです。牛肉です。骨がじゃまです。



うーん



それにしても、いつ終わるか分からないってことは、大変だな。
 
どういう気持ちで居ればいいのか分からなくなるよね。

ゴールが見えないと走れないでしょ。
 
だって、どんくらいの力出していいのか分からないんだから。

いつも全力で!って思ってても、
 
100メートル走る時と1000メートル走る時じゃ違うもんね、走り方。

いつか終わる、ってことだけは確かなんだけどね。
 
全てのことはいつか終わる。それが唯一の救いでしょ。
 
だから一生懸命できるってこと。
 
だから生きていられるってこと。

 
いつか終わる。

 
でもいつだ?




とりあえず、かんぱーい



私のバスの車掌さんや、他のバスの運転手さんたちと・・・・(運転手!?大丈夫ですか? )
 
私のバスの運転手さんはビール飲んでなかった。安全運転なのだ。

今夜もここでバスに泊まるから大丈夫だ~とか言ってたけど・・・この人たち大丈夫かな?
 
バス会社の人には違いないのだけど・・・ホントに運転手なのかどうかは謎です。
 
 
 
 
そろそろ、24時間が経とうとしていた。

今夜もここで眠るのか・・・・

頭カユイなァ

汗かいてるし・・・
 
 
 
ちょっと散歩。

数百メートル歩くと封鎖されてる所に着いた。

私たちってかなり先頭だったんだなァ~って初めて気づいた。

てか、こんなお粗末なもんなの?ブロッケオって。

 


バイク野郎たちが自分のバイク並べて、地面には石並べてる。

輪の中では漫才みたいなことしてて、笑いが起こっていたり・・・

歩行者天国みたいな雰囲気。



誰がなんの為に道路封鎖してるのかは、言葉の問題で分からない。

だけど、たったこれっぽっちのバリケードを大の大人たちがだまって待っているというのはどういうことなんでしょう?

機動隊的な人たちが出てきて、一瞬で通れるようにしてくれないのはなぜ?

運転手たちがみんなで怒って、この石とバイクをどかすことは不可能なの?

24時間もただ黙って待っていなきゃならないってことは、言葉を理解しても、きっと私には分からないことだと思う。


「肝臓先生」は読み終えていた。


辺りが暗くなり始めた。

風が吹く。

雨が降る。

雷もなる。

午後8時20分。

ストライキが終わった。

クラクションが鳴り響く。

チャオ~ バモ~ス!!

少しづつ車が動き出す。

私たちのバスが動き出したのは8時40分だった。

雨は止んでいた。

私は窓から顔を出して、前方を見つめた。確かに動いている。

後ろを振り返る。

あのちっぽけなブロッケオはもう越えている。

雨上がりの星のない空に稲光が走る。


約29時間

名も知らぬ町で過ごした。

それは案外楽しい時間でもあった。

そして、

サンタクルスへ向かっている。

晴れ晴れとした気分で。

サンタクルスには呼ばれてないのかしら?なんて考えたりもしたけどね・・・

コレが ボリビア名物 ストライキ。よくある話なのよ。
 
 
 

バスは猛スピードで走った。

何台も追い抜いて走った。

午後11時20分    サンタクルス到着。

すぐ近くだったんだな。

朝一のバスに乗ってりゃ、もしかしたらストライキに合わなかったかも・・・・

なんてね。


ピンボケてるけど・・・私の運転手さん
運転手、この人でよかった。なんか安心してたわ、わたし。
 
 
 
 
 
追伸 
あのバイク野郎たちは、バイクタクシーの運転手で、労働条件の抗議の為のブロッケオだったそうな。後で聞いて知った話です。
 

2 件のコメント:

  1. 精神力、強いなぁ、相変わらずすごい旅してますね。私なら、心が折れているかも?南米はストライキでなくても、よくわからない道路閉鎖がありますね。工事なのか、落石なのかはわかりませんでしたが、、。このブログを読み始めた頃は、”応援してます”ってスタンスだったけど、今じゃ、こっちが元気付けられてる。

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  2. tanakaさん
    いつもありがとうございます。
    しかし29時間長かったですよ。初めから29時間ですって言われてたら気分も違うだろうけど、いつだ?まだか?って不安もありました。

    いつもコメント頂けるので、わたしも元気付けられています。
    ありがとうございます。

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